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◇ 投稿記事 ◇ JI1MDZ -56-   
「角形リチウムイオン電池を用いた移動運用電源」の自作    
2021.10.19 JI1MDZ 伊東
モバイルバッテリー、DAISOカタログより 自作した移動運用電源
◆はじめに
 DAISOからスマホ、ノートブックに充電出来るモバイルバッテリーが発売されています。
電池の容量は小形品が4000mAh(550円)、大形品が10000mAh(1100円)の2種類です。試しに小形品を購入、中の電池を取り出し移動運用の電源に利用する事を考えました。
リチウムイオン電池の定格電圧は3.7Vで4個を直列接続すると電圧は3.7x4=14.8Vになります。リグ(FT-857)の入力電圧範囲は13.8V±15%(11.7~15.9V)の規格で満充電時の電圧を考慮して4個のモバイルバッテリーを購入しました。

◆モバイルバッテリーの分解調査
小形電動カッターを用いて開けてみると下記のような構造になっています。
 製品のサイズは縦63mm、横93mm、厚み14mm、重量100gでした。
 電池のみを取り出した電池単体のサイズは縦54mm、横59mm、厚み9mm 重量は72gでした。

◆リチウムイオン電池とBMS基板について
 リチウムイオン電池は体積あたりのエネルギー密度が高く扱い方を間違えると火災などの問題が発生します。このためリチウムイオン電池を安全に動作させる目的で多種類のBMS基板(Battery Management System)が発売されています。amazonから下記のBMS基板を購入しました。(価格は929円)
主な仕様:( )内は4個直列での電圧       
 過充電停止電圧:4.28V(17.1V)
 過放電停止電圧:2.55V(10.2V)
 連続充電電流:30A(要冷却)
 連続放電電流:30A(要冷却)
 短絡保護回路内蔵

 このBMS回路の機能は4個直列電池の中で最初に1個の電池が充電、或いは放電の停止電圧に達したら充電または放電が即刻停止します。                               
                                      
 備考:BMSには多くの種類があります。          購入したBMSの機能は上記の機能しかありませんが中には放電中に放電停止電圧に近い電池に対して他の余力のある電池から充電するような補完機能を持っ優れたBMSもあるようです。

◆BMS基板と電池の接続について
 コネクタに接続された4本の赤色線と1本の黒色の線は各電池の電圧を検出するセンサー線です。
P+、P-の端子は放電時はリグに接続し充電時は充電用電源に接続する共用端子です。


◆4個の電池の事前充電処理
 4個の電池の電圧を計りましたら3.62~3.76Vとバラバラでした。この状態で組み上げて充電すると満充電に近い電池が先に充電停止電圧に達し他の電池は充電不足の状態となります。
4個の中に充電不足の電池があれば電池全体の性能が生かされません。
このため各電池を満充電にしてから回路に組み込む事がポイントです。

◆電池の容量測定とBMSの動作確認
 電源ボックス用に加工した樹脂ケースにBMS基板を入れそこから取り出したセンサー線を4個の電池に接続します。測定ではデーターロガー(data logger)を用いて電流、電圧などを時間と共に連続測定しますが所有していませんので適宜時計を見ながら記録しました。

17.4Vで充電し(充電を開始した時の電流は1.2A)充電電流は電池の電圧が上昇して来ると電流は徐々に下がります。充電電流が0になったら充電完了とします。

次に電池容量を測定するため放電抵抗を33Ωと50Ωを並列接続(20Ω)し、抵抗が熱を持つので醤油皿に乗せました。経過時間による放電電流測定、電圧測定を行い放電電流が0になったら測定終了です。

経過時間と放電電流値の積分値が電池の容量となります。

◆放電測定の結果
注:4個の電池を1組の電池としましたので各4個の電池をセルの名称に変更しました。
 4Sとはセルが4個直列(4Series)の意味です。


◆電池容量の測定結果
 電池の容量は測定結果から3761mAhでした。購入した電池の定格容量は4000mAhで定格容量との比は3761/4000=0.94、(94%)となりほぼ満足出来る結果となりました。

◆BMS動作の確認
 BMSの動作を心配していましたが過充電停止電圧に達すると充電電流は0.0A、過放電停止電圧になると放電電流は0.0Aとなり正常に動作しました。
充電完了電圧は上記のデーターからセル番号2の4.18Vとなり他のセルの電圧が4.18Vにならなくても充電停止となりました。

放電ではセル番号1が2.74Vとなり放電停止電圧に達し放電停止となりました。他のセルはまだ放電は可能と思われますがこのBMSの結果です。
心配していました過充電、過放電の電流遮断の動作が確実に確認出来たのが安心材料です。

 備考1:電池の容量を測定する条件は電池の製造メーカー、電気用品安全法の規定による測定が必要ですが分解した電池であり規定不明です。リグ(FT-857)の受信電流が700mAなのでこの放電電流に近い負荷抵抗を選びました。

 備考2:表の充電完了後のセル電圧及び放電完了後のセル電圧が購入したBMS仕様に規定された停止電圧になっていませんが瞬間の停止電圧を測定する事が出来ませんので約5分程度の遅れがあります。このためBMSは規定電圧の通り動作したものと推定します。


◆放電停止前の警報回路の製作
 交信途中に放電停止電圧に達すると電源が落ち交信が突然中断します。
交信相手は何が起こったの解かりませんし相手に失礼です。
電源は動作中の電圧、電流計がありますが交信に夢中になっていると見落とす可能性大です。

また、計器を見ながらの交信も苦痛です。このため事前にブザーを鳴らし交信を終了する準備のための警報回路を自作しました。

 警報の開始電圧は放電はグラフから13.5Vと決めコンパレ-ターICを用いました。
  
自作した警報回路基板
 
◆完成した移動用電源の内部
 出来上がりました電源内部の部品配置です。
移動用電源のサイズは幅140mm、奥行き87mm、高さ50mm、重量460gでした。

◆電池の容量から運用時間の推定
 測定しました電池容量から交信する電波形式と運用可能な時間を推定しました。
1局と交信する時間を送信3分、受信3分として次の局と交信するまでの時間を5分と仮定しました。合計で11分間隔の交信です。

電波形式をSSB20W送信の場合はリグの電流は最大で2.9Aです。
計算すると0.05x2900+0.05x700+0.083x700=238mAhです。
(受信時の電流は700mA)放電停止電圧までの交信局数は3761/238=15.8局約15局と交信が可能で運用時間は15局x11分=165分 約2.7時間となり2時間半程度の運用が可能な事が分かりました。

CWでは10W連続長点送信で3.8A流れ、乱暴な推定計算になりますが前述の条件を当てはめて計算すると13局 2.3時間の運用、FM10W送信では4.2A流れ、同様に計算すると12局、2.2時間となりました。
計算した結果から上記の条件であれば2時間程度の運用が可能な結果となりました。

◆移動運用時の様子
 移動用電源などをリュックサックに詰め鷹取山の東屋近くの場所にリグを設置をしました。
リグを20W出力SSBに設定して最初は6mバンドでCQを出しましたが応答無く2mバンドに切り替えて3局と交信が出来ました。
最後の局との交信では話す声が大きくなると警報音のビー、ビーの警報が鳴りますが話す言葉と言葉の間の無音状態では電池の電圧が急速に上昇して警報が止まります。

最初の移動運用だったのでかなり興奮してCQを連呼していたので推定計算とだいぶ異なる結果となりました。


◆その他、組み立て材料など
 本体のケースはDAISOの汎用のケースを使い高さを約15mmカット、ケースの中央部の強度が弱くペコペコするので補強と電池を仕切る目的で2個購入しました。
上蓋はアクリル板の加工が必要と思っていましたが百均のセリアで寸法がピッタリ合う透明ケースが見つかりました。

積層しました4個のセルはテープで軽く止めセルの電極間に隙間があるので角棒に切断した防振ゴムを入れて移動時の電池移動止めとしました。

また電源に電圧、電流計と警報回路を組み込んだので電源を使用しない時は計器、警報回路への電流の遮断を考えました。スイッチを追加しない方法を考え5ピンのDINコネクタを使いケース側に取り付けた電池側のソケットの1ピンは計器、警報回路の電源に接続し、リグ側から接続されたDINソケットのプラグ側の1ピンは電池から来るプラスに接続しました。プラグを電源に差し込むと計器と警報回路に電源が供給されるようにしました。

リチウムイオン電池は年々小型化していますので将来同一サイズの電池で容量が大きくなり電池のみを入れ替えて更に高容量の移動用電源に改造する事を楽しみにしています。
以上
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  【2021.10.19 JI1MDZ 伊東 記】

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