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◇ 投稿記事 ◇ JH1OHZ   -58-   
無線機のSメーターの振れ=表示値って何?
RSレポートで気になること 
 
21,12,10
JH1OHZ片倉由一

 無線機のSメーターの振れ(表示値)が受信電界強度に照らし合わせてどうなっているかを、改めて考えてみました。

 RSレポート交換では「フルスケールです。」、「59+〇〇dBです。」、「よく聞こえていますが、当局のSの振れは(渋くて)、、」という局長もいて、Sメーター読みの表現は様々です。

 電波法上では無線局運用規則第13条1項、別表5.6の中でQ符号のQRKは了解度を1から5で定義していますが、信号強度を表現する定義は一切ありません。

 アマチュア無線の無線機や、通信型受信機には一部にSメーターがあるものもありますが、海上国際VHF通信では「感度いかがですか?」、「感度良好です。」とか、他の無線業務によっては「メリットどうですか?」の表現はあっても、「S(信号強度)はどうですか?」はありません。要は良好に通信できているかどうかです。(350MHz帯のデジタル簡易無線機では、最近Sメーターの表示モードがあるトランシーバーも一部あり、マニアには人気があります。)

 国内アマチュア無線機器メーカーも、海外メーカーも基本的に各社独自規格で製造されています。もちろんメーカーが異なっても同じようなS表示になることは多々あります。それは各社毎の目標値が同じか、近似値だからです。

 HF帯を含む無線機はまだしもV・UHFのFMモービルトランシーバーでは、振れが良すぎる傾向です。ましてやハンディ機はそれ以上の「おまけの振れ」です。SはdB(デシベル:対数表示)として捉える数値ですがそのような正確に数値変換する回路を持たず、検波した直線的な変化値を表示する無線機もあるようです。FMトランシーバー等は、Sの振れがよくないと感度が悪いように受けとめられ、ハムショップで“売れない無線機”になってしまうということを聞いたことがあります。

 「フルスケールです。」という表現は、無線機としての受信強度の定規を持たずに、「当局の無線機のSメーターは振れ過ぎで、フルスケールになってしまいます。」と言い換えることもできます。フルスケールは「信号はとても強いです。」という誉め言葉ではないことを、心得る必要があります。

 お馴染み局との交信時に「今日はS7です、」とか、「今日はS9オーバーです、」とか、「10dBオーバーです、」といった、各局間のSのレポートは相互間で定義された基準となる受信電界強度ではないことになります。あえて言えば「当局の無線機のSの表示では、、、」ということになります。

 Sメーター表示はIARU(国際アマチュア無線連合: International Amateur Radio Union)規格で定義されており、少なくともHF帯の無線機はそれを参考にしているようですが、“ずばり”に合わせているメーカーは極々少なく、国内の一部メーカーがSメーター表示を2タイプ持っていて、それを切り変えることで、IARU規格で表示できる無線機もあります。

 IARU規格では30MHz以下は、S9が-73dBm(アンテナ起電力で100μV:40dBμV、受信機入力(50Ω)部で50μV)で、S9以下のS一目盛りあたりは6dBです。30MHzを超える周波数ではS9が-93dBmでS9以下のS一目盛りあたりは6dBです。

 HF帯のS9が-73dBm、Sステップ6dBは、1950年代に開発されたコリンズの受信機75A-2が元になっています。

 しかし、S9を-73dBmとすると、各社が作り続けてきた無線機のSの振れと比べると振れが渋くなってしまうため、-73dBmより幾分弱い信号(10dB以内の程度)をS9として定義しているメーカーが圧倒的に多いように思われます。この手法としてプリアンプON状態で、今迄製造してきた無線機のSの振れと比べ違和感なく使えるようにしています。プリアンプOFFでは増幅素子のバラツキが出てしまうので、プリアンプONで一定の受信感度になるよう調整しています。

 IARU規格に準拠でないにしても、IF-DSPが当たり前(10年位前から?)になってきた以降、及びSDRベースの無線機からは、IARU規格を意識して作られてきているように思いますが、それでも各社毎の独自規格です。

 IARU規格のS一目盛り6dBは、これでは無線機のSN比や外部雑音を考慮すると実情に合わないので、国内メーカーでは殆ど3dB間隔、一部では4dBで目盛っているのが実情です。3dBはS一目盛りでは電力差2倍(または1/2)になります。これはアマチュア無線家に一般的に受け入れられており、今となっては変えられないと思います。前述のSメーターの振れがいい無線機ではS一目盛で2dBというあるものがあるのも事実です。

 30MHzを超えるV・UHF帯ではIARU規格はS9が-93dBmですが、各社毎、無線機毎の基準で作られているのが実態のようですが、最近のHF帯からV・UHF帯までのオールモードの無線機は、かなりIARU規格を意識して設計されているようです。
<まとめ>
 上記に基づき、SG(シグナルジェネレーター)+微調整できるATTとSDRによる受信強度を組み合わせて、一部の無線機のSメーターの振れを実験・確認してみました。多くの無線機で確かめたわけではありませんので正確さに欠ける点はあると思いますが、自局の無線機のSメーターの振れと受信電界強度との関係を認識しておくことは大変意味あることではないかと思い、上記のとおり、Sメーターの振れの実態をまとめてみました。興味のある方は、是非「自分の無線機のSメーターはどうなんだろうか?」と一度考えてみて下さい。
<気になっていること>
① RSレポート”59”の場合、「ご・きゅう」は正解、「ファイブ・ナイン」も正解ですが、「ごじゅう・きゅう」、「フィフィティ・ナイン」は間違いです。この場合の5は了解度、9は信号強度で別の意味です。色々なバンドでウォッチしていると、間違いを聞くこと度々です。みなさん気を付けましょう。

② 相手にRSレポートを送る時に「59で頂いています。」という言い方を度々耳にします。何を頂いているのでしょか?”頂いて”とは何となく親切・丁重に言っているつもりでしょうが、間違いです。「59です」が正しいです。又は「59で届いています。」でもいいでしょう。正しい言い方をしないと、ビギナーハムやカンバックハムの方々は「こういう言い方をするのかな」ともなりかねず、おかしい言い方が普及してしまいます。”頂いてます”には気を付けましょう。

dBmとは、1mWの電力を基準に対数表示しデシベル(dB)で表した単位で、dBの後ろにmWの意味でmをつけdBmと表示します。電力の単位は、通常W(ワット)ですが、通信に使用する比較的小さい電力の表示にはdBmを使用します。1mW=0dBmとなりますが、具体例では0.1mW=-10dBm、0.01mW=-20dBm、10mW=10dBm,100mW=20dBmとなります。
【参考文献】 JA1VBN's S-units and S-meter discussions (coocan.jp)
上記URLはJA1VBNのホームページでSメータの規格について詳しく案内されています。是非ご覧になってみてください。
                                                  以上
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  【2021.12.10 JH1OHZ 片倉 記】

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