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オートアンテナチューナATU-100キットの製作とQRP化  
1.amazonで面白キットを入手
amazonで最近オートアンテナチューナのキットが話題になっています。ATU-100で検索すれば色々な値段のものが出てきますが、値段の違いは何なのか分かりません。10K円ほど出せば完成品も入手できるのですが、作る時のワクワク感、電源ON時のドキドキ感を味わうため、4K円程で出品されているキットを入手しました(写真1)。国内発送であったため3日ほどで届きました。残念ながらチップ部品はすでに基板に実装済でしたので、各種コイルを巻く作業が中心となりました。        

【写真1】ATU-100キット

2.オートアンテナチューナATU-100とは
N7DDCというコールサインの方が設計された機器のようであり、ハードウェア、ファームウェアの仕様や設計データが公開リポジトリgithubに掲載されています[1]。最新のファームウェア(ソースファイル、hexファイル)もここからダウンロードできるので、今後も改良や機能追加ができます。まずは[2]のマニュアルをダウンロードすれば、回路図やEEPROM設定値の意味など製作に必要な情報がそろいます。
本機の構成は、7個のインダクタンス、7個のキャパシタンスをリレーでON、OFFすることにより、それぞれ2の7乗通りの値を作り出せるようになっています。このようにして作り出したインダクタンスを直列に、キャパシタンスを並列に接続することでインピーダンス変換回路を実現します。図1にATU-100の模式図を示します。入力部には方向性結合器があり、これにより進行波電圧、反射波電圧を8ビットマイコン(PIC16F1938)のアナログ入力に取り込みます。PICマイコンではこれらをデジタル化し演算を行い、SWRが低くなるように15個のリレーをON/OFFさせてインダクタンス、キャパシタンスを変化させることを繰り返します。

【図1】ATU-100構成図

3.製作と改造方針
 元のキットでは、チューニングを行うには5W以上の電力を入力する必要があるとのことです。一方、QRP仕様にすることもできるようであり[3]、5W以下の電力でもチューニングを行わせることができるとのことです。そこで、最初からQRP仕様になるように改造しながら製作することにしました。具体的には以下の変更を行えばよいようです。

(1)方向性結合器のタンデムマッチの巻数比率を、1次側:2次側を1:10から1:5に変更します。
(2)PICマイコンに書き込まれているEEPROMデータを以下の3か所で変更します(図2の赤枠の個所)。
-アドレス05h:チューニング動作を開始する最小電力です。デフォルト値は05で、5ワット以上を表します。ここを01に書き換えることで1W以上でチューニング動作できるように設定します。
-アドレス06h: チューニング動作を開始する最大電力です。入力電力がこの値を超えるとチューニング動作を開始しません。デフォルト値は00で、最大電力のチェックは行わないことを意味します、40に書き換えることで最大電力は40W以下とします。
-アドレス31h:タンデムマッチの巻数比率です。デフォルト値は10で、元の巻数比率に合わせて1:10です。変更後の巻数比率1:5に合わせて05に書き換えます。

【図2】QRP対応の設定箇所

4.ファームウェアバージョンの確認とEEPROM書き換え
(1)ファームウェアバージョンの確認
 PICマイコンのみが実装された組み立て前の基板において、付属のディスプレイを接続し、PICマイコンの電源ピンに5Vを加えると、ディスプレイにバージョン番号が一瞬表示されます。これにより書き込まれているファームウェアバージョンを確認しました。最新はV_3.2ですが、もし古いバージョンが書き込まれている場合には、githubからatu_100_fw_EXT_32.hexをダウンロードし、Pickit2で書き込む予定でした。最新版が書き込まれていましたのでバージョンアップは不要でした(写真2)。

写真2】ファームバージョンの確認
(2)EEPROM書き換え
 基板のディスプレイを接続する端子(5ピンヘッダー)は、PICマイコンのプログラミング端子を兼ねています。ディスプレイを外してここにPickit2を接続します(写真3)。書き換え作業は、いったんファームウェアをPICマイコンからPC上のPickit2アプリにReadボタンで読み込み、Pickit2アプリ上で上記EEPROMの3か所のデータを変更する編集を行い、WriteボタンでPICマイコンに書き込むことで完了します(図2)。

【写真3】Pickit2でEEPROM書き換え

5.組み立て
 組み立てはコイルを巻く作業が中心になります。3つの空芯コイルについては、コイル径、巻線径、巻数、4つのトロイダルコイルについてはコア材の枚数、巻線径、巻数が回路図に書かれています。空芯コイルはドリル刃の軸を利用して密に巻きます。トロイダルコイルはきつく巻かないと基板に実装する際にリレーと干渉しますので注意が必要です。なおトロイダルコイルの巻数はコアの穴を巻線が通過する回数で数えます。
 巻いた各コイルが回路図のインダクタンスになっていることをLCメータを使って確認しました(写真4)。ほぼ近い値であることを確認した後に基板に取り付けました。最後にリレーや5Vレギュレータ、電解コンデンサー等を取り付けて完成です。

【写真4】製作したコイルのL値測定

6.ロングワイヤー 
完成したATU-100QRP改造版が、5W以下でもチューニング動作することを確認するため、ロングワイヤーアンテナを設置して、実際に動作させてみました。2階のベランダから10mロングワイヤーをロッドに沿って伸ばし、ベランダの床にカウンターポイズ3本を這わせました。トランシーバはFT-817を使用し、出力は0.5W、1.0W、2.5W、周波数は3.5MHz帯、7MHz帯、14MHz帯、21MHz帯、28MHz帯、50MHz帯で試しました(写真5)。

【写真5】 チューニング動作の様子

 ATU-100でのチューニング動作はチューニングボタンを長押しすると、キャリア待ち受け状態となります。動作可能な電力のキャリアが入力されると、バチバチと景気よくリレーが断続し数秒でチューニングが完了します。
 まず、0.5Wでは、どの周波数帯も全くチューニング開始しませんでした。1.0Wではチューニング開始しますがチューニング動作中に一瞬でも1.0Wを切るとその時点でチューニングが止まってしまい不安定でした。2.5Wでは安定してチューニング動作を行いましたが、3.5MHz帯はチューニング動作が止まらず、いつまでもリレーの断続音が鳴りやまないので中止しました。 3.5MHz帯以外の周波数帯でチューニングが終わった時のSWRは表1のようになりました。

【表1】 各バンドでのチューニング」結果

7.おわりに
 まだ基板単体で動作させている状態ですが一通りの動作確認ができたこと、当クラブでも興味のある方が多いかと思い、製作体験を紹介しました。今後、適当なケースへの組み込み、電池電源の組み込みをやっていきたいと思います。また実運用において、使い勝手、調整範囲など手動のアンテナチューナとの比較などもしてみたいと思います。
<参照URL>
[1]https://github.com/Dfinitski/N7DDC-ATU-100-mini-and-extended-boards/tree/master/ATU_100_EXT_board

[2]https://github.com/Dfinitski/N7DDC-ATU-100-mini-and-extended-boards/blob/master/ATU_100_EXT_board/
ATU-100_Extended_Board_User_Manual_eng.pdf

[3]
https://www.youtube.com/watch?v=dPys_-_wPcQ
  【2022.03.08 7N4LXB 池田 記】

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