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ATU-100のアンテナ直下型仕様への変更について  
JA7UIO/1 山崎 
はじめに
 ATU-100については、すでに7N4LXBさんやJH1OHZさんがレポートを掲載していますが、今回はそのATU-100をアンテナ直下型仕様に変更してみた結果をレポートさせていただきます。以下のような内容でまとめてみましたのでご興味ありましたらご覧ください。

 ・ATU-100の入手
 ・完成イメージ
 ・防水ケースへの組み込み
 ・ATUへの同軸給電対応
 ・チューニング不安定対策1(EEPROM変更によるQRP化)
 ・チューニング不安定対策2(ソースコード変更)
 ・補足 PICの開発環境について

ATU-100の入手
 使用したATU-100は皆様と同じようにアマゾン経由で購入しましたが、次のような理由でキットではなく「ボードの完成品」(約4.2k円)を注文しました。

 理由その1:届いた部品に不足があると面倒なので
 理由その2:トロイダルコイルを巻くのは自信が無いので

 注文から約1ヶ月で手元に届いたATU-100は幸運にも?単体では特に問題なく動作しました。

完成イメージ
 今回は下図のような完成形をイメージして作成しました。パッチンコアやカウンターポイズはJH1OHZさんのHAMworld記事を参考にしています。

【完成イメージ】
 今回のポイントはATUへの電源供給用ケーブルを使用せず、BIAS-Teeという回路を使って同軸ケーブルのみで電源供給も行うということです。以前LDG社製のATUを使ったときに電源供給だけでなくATUのコントロールも同軸ケーブルのみで実現していました。電源供給の方法はわかったのですが、コントロール方法は色々調べてもわかりませんでした。もし、ご存知の方いらっしゃいましたらご教示いただけると嬉しいです。同軸給電に使用するユニットはMFJ社からBIAS Tee Power Injectorという製品が販売されているようですが、それなりの値段(@8,000円?2個必要)なので自作することにしました。

 同軸ケーブルでATUの電源供給は出来たとしてもコントロールは出来ませんので、ATU-100はAUTOモード固定で使用することにしました。これについては実際に使ってみないと使いものになるかどうかわかりませんので、「やるだけやってみよう」という感じでした。

 4:1バランについては必要無いのかも知れませんが、インピーダンスの整合範囲が広くなるということなので設置することにしました。(LDG社のATUでも使用を推奨していたので)


防水ケースへの組み込み
 アンテナ直下ということは屋外設置になりますので適当な防水ケースを探したところ、タカチ電機工業でちょうど良いものがみつかりました。BCARシリーズというもので、防水仕様はもちろんですが、透明の扉を選択できますので中が見えて便利です。ケースの価格は2,000円程度で手頃だったのですが、オプションで用意されている固定用の金具を揃えるとケースと変わらない金額になるので購入しませんでした。このため、いまだに固定はどうしようかと悩んでいます。Hi

 完成した屋外用ATU-BOXの内部はATU-100の両側を基板ではさむようなレイアウトでうまく固定することができました。

【ATU-BOX内部】
 ATU-100はボード完成品で購入したため入出力のSMCコネクタが実装されており、なんとかしてこれを外したかったのですが、しっかりはんだ付けされていたので外すのは諦めました。

ATUへの同軸給電対応
 送信機側とATU側にBIAS-Teeと呼ばれる回路が必要になりますが、下図のようにCとLだけで構成される非常にシンプルなものです。


【BIAS-Tee回路】

 TXからのRF成分はC1を通過させ、ATUに供給する電源のDC成分はRFチョークのL1を通過します。同軸ケーブルの中はDC13.8Vのオフセットが乗ったRFが通過し、ATU側のBIAS-Tee回路でRFとDCを分離して元に戻します。

 ATU側のBIAS-Tee回路はATU-BOX内に内蔵しましたが、TX側はBIAS-Tee UNITとしてケースに入れることにしました。このケースはジャンク整理でいただいた「マイクコンプレッサらしきもの」のケースで、ほぼそのまま流用できて穴あけの手間が省けたので、ちょっと感動しました。Hi

BIAS-Tee UNIT

チューニング不安定対策1(EEPROM変更によるQRP化) 
 ATU-BOXとBIAS-Tee UNITが完成し、いざオンエアと行きたいところですが、世の中そう甘くはありませんでした。 ATU-100はAUTOモードに設定してあるのですが、送信してキャリアを送ってもSWRが下がらないどころか、そもそもチューニング動作に入ってくれないのです。
 JH1OHZさんの記事で保護回路の影響にふれていたのを思い出し、7N4LXBさんの記事「ATU-100キットの製作とQRP化」を参考にして最小チューニング電力を5Wから1Wに変更してみました。

 私のHF機はICOMのIC-730Sで10W出力のため、最小チューニング電力5Wでは余裕が無いのかも知れません。余談になりますが、当時のKENWOOD製品は型名末尾にSが付くと100W機になりICOMではSが付くと10W機でした。紛らわしいですね!Hi

ATU-100はこのような設定値をEEPROMの書き換えで容易に変更できるようになっています。(詳細は7N4LXBさんの記事を参照ください)
 本来であればEEPROMの変更に合わせてSWR検出コイルの巻数比も変更した方が良いのですが、ATU-100の強力なはんだ付けをきれいに外す自信が無かったのでEEPROMの設定変更のみとしました。(ちょっと手抜きです)

 この変更によりチューニングはしてくれるようになったのですが、肝心のSWRが下がりません。なぜか一番厳しそうな7MHzでは1.2以下になったのですが他のバンド(10M以上)は下がりませんでした。カットアンドトライの末、ATUからバランまでの同軸ケーブル2mを1mの短いものに変更したところ他のバンドでもSWR1.3以下になり、「めでたしめでたし」となれば最高ですが、これで終わりではありませんでした。

チューニング不安定対策2(ソースコード変更)
 例えば21MHzでチューニングしSWRが下がったとしても他のバンドでチューニングして戻ってくると、直前では下がっていた21MHzのSWRが下がらないということが頻繁に発生しました。ATU-100は最後にチューニングした状態をEEPROMに記憶しており、同一のバンドで使用するときは便利と思いますが、バンドを切り替えたときに最悪のSWRからスタートすることがあるのではないか?と推測しました。各バンド毎に設定値を記憶できればベストですが、それは難しいので「高SWRを検出したらATUをリセットしてからチューニング動作に入る」ように変更してみようと思ったのですが、ソースコードがありません。

 ATU-100の開発者N7DDCさんはmikroCという有料(約3万円)の開発環境を使っており、私が無料で使っているMPLAB XのXC8コンパイラとは互換性がありません。そこで、いったんは諦めたのですが、世の中には同じようなことを考える人がいるもので・・WA1RCTさんがMPLAB X環境に移植しているという情報をつかみました。

 早速そのソースコードをダウンロードしてみたのですが、電力測定値が異常に低くチューニングもしてくれませんでした。WA1RCTさんの投稿をよく読むと「OLEDの表示は確認しましたが、その他は未確認」と書いてありました。やはり世の中甘くはないですね。原因を見つけるのに1週間かかりました。わかってしまえば何のことはないのですが、電力測定に使用しているADCのリファレンスを「内部」にしなければいけないところが「外部」になっていたのが原因でした。(現在公開されているソースは修正済みのようです) 

【完成写真】
 ソースをいじれるようになったところで話を元に戻します。バンド切り替え後に高SWRになり、おそらくTXの終段保護回路が動作しているのでは?と推測しました。この対策として、「オートモードでチューニング動作に入る前にSWRを確認し、所定の値を超えていたらATUをリセットしてからチューニングする」としたいところです。それらしい処理をしている部分を見つけ、ATUのリセット処理を追加しました。効果が有ったように見えますが、もう少し実際の運用で評価したいと思います。

補足 PICの開発環境について
 ATU-100にはPICと呼ばれるワンチップマイコンが使われており、MPLAB X IDEという開発環境を無料で使うことができます。CコンパイラXC8も無料で使用可能ですが、無料の場合は出力されるコードの最適化が最低限に制限されるため、大規模開発や実行速度が重視される開発には向きません。とは言うものの、ちょっとした小物の開発には無料版で十分使用可能と思います。ちなみに有料版のPROは30万円近い価格のようです。

 なお、EEPROMの設定変更のみ行いたいときは、ちょっと紛らわしいですがMPLAB X IDEではなく、MPLAB X IPEを使用します。なお、IPEを起動した直後は Standard modeになっているのですが、EEPROMの内容を変更したいときは Advanced modeに変更することが必要です。メニューのSetting → Advanced mode と選択するとパスワードを聞いてきます。パスワード入力欄のすぐ下にデフォルトパスワードが表示されていますのでパスワードの意味があまりないですが・・Hi
  【2022.06.25 JA7UIO 山崎 記】

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