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◇ 投稿記事 ◇ 7N4LXB  -82-    
AMラジオ付き50MHzAMトランシーバの製作  
1.故障したトランシーバが出てくる
 昔、バラックで製作し、保証認定、無線局登録していた50MHzAMトランシーバが戸棚の奥で見つかりました。久々に通電して動かそうとしましたが、長年放置していたため送受信ともできない状態でした。生基板の銅箔上に部品を立てて配線したバラックなので、どこか接触不良かショートが生じている様子でした。またVXOで使用しているバリコンも粗悪な中国製であったため、ローター軸の接触不良が生じていました。そこで、完全に分解して、もう一度基板から作り直すことにしました。
2.改修方針
 交信しない時にも何か使えて、しばらくの使用に耐えられるように以下のように改修することにしました。

(1)ケースは塗装し直し再利用
 アイボリーのプラスチックケース(タカチSY-150)は表面が茶色に変色していたため、グレーに塗装して見栄えを良くします。

(2)バラック時の回路構成をほぼ踏襲
 保証認定を得た送信系統はそのままの構成とし、その他の回路は適宜見直しながら組み立てます。

(3)プリント基板形式
 耐久性を高めるためバラックはやめてプリント基板形式にします。ただしエッチングは行わず、生基板の銅箔面をカッターで切り出してパターンを作ります。この方法は根気がいりますが、組み立てながら変更したい回路、追加したい回路を余った銅箔面を切り出して作ることができる自由度があります。

(4)国産ポリバリコンの使用
 最近はどの店を覗いても中国製のみですが、これもだんだん質が悪くなっています。真鍮のロータ軸が軸受の穴に刺さっているだけなので、数回回しただけで接触不良になってしまうものもあります(このようなバリコンは軸受に真鍮のワッシャをかませてやると耐久性が増すことが経験で分かりました)。先日クラブメンバから国産のスーパー用親子ポリバリコンをいただいたのでこれを使用します。

(5)AMラジオの追加
 50MHzAMは交信の機会が少ないため、親子バリコンの親セクション(最大容量160pF)を利用したAMラジオ回路を組み込み、普段はAMラジオとして使えるようにします。
3.構成
 本機の回路ブロック図を図1に、主要電源系統図を図2に示します。


 まず図1に記載した受信機、送信機、VFOについて説明します。受信機は、AMラジオ用ICであるLA1600を使用したシングルスーパーとしました。手元にあったクリスタルを活用したので、中間周波数をAMラジオICとしては高い周波数である10.24MHzとしており、IF段のゲイン低下を補うため、BPFの後段に2SK241によるIFアンプを追加しています。

 送信機は、FMラジオフロントエンド用ICのTA7358を使用しています。このICを本来のFMラジオに使用する時には、ミキサーの前段に使用するRFアンプを、本機ではミキサー後段のRF増幅に使用しています。ドライバー段の2SC1815、終段の2CS2053に対してコレクタ変調を行い、無変調時に約0.5Wの出力を得ています。

 VFO回路の原発振は、20.25MHzのクリスタルを使用したVXOであり、親子バリコンの子セクション(最大容量60pF)により発振周波数を20.20MHz近辺で可変とします。次段の2SC1815による緩衝AMPで2逓倍して40.4MHzを取り出します。当初はここから送受信機両方のミキサーに同時に信号を供給する予定でしたが、実際に動作させてみると負荷が大きすぎるようであり、動作が不安定でした。そのため更に2SK241による緩衝AMPを追加し、受信機のミキサーにはこちらから信号を供給することにしました。以上により送受信周波数の可変範囲は50.60MHz~50.70MHzとなりました。

 AMラジオ回路は、FM/AMラジオ用ICであるLA1800のAMラジオ部を使用しました。このICのAMラジオ部はストレート方式であり、選択度はいまひとつですが音が良く、ローカル局を聞き流すにはちょうどよい感じです。

 図2に記載した電源系統について説明します。電源系統は送受信回路やVFOが出来上がってから考えたため、5Vレギュレータを3つ、3.3Vレギュレータを1つ、合計4つも使用することになりました。受信機、送信機、VFOに独立して5Vを供給する系統、AMラジオに3.3Vを供給する系統、送信出力段に12Vを供給する系統を設けました。オーディオアンプICのTA7368は受信機とAMラジオで共用するため、電源供給をダイオードで切り替える方式としました。  

4.回路の説明
 本機の回路図を図3、図4に示します。ここでは図4のメータ回路、LED点灯回路について説明します。メーター回路のメーターは、100均の電池チェッカーから取り外したフルスケール500uAの電流計です。野外での電池による運用を考えて、これを2回路のトグルスイッチで電池残量計、S/パワー計と切り替えられるようにしました。電池残量計は目盛を振っていないので、針の触れ具合で残量を判断するアバウトなものです。Sメータとして動作させるときには、LA1600のAGC電圧を使用します。AGCが動作する際の最大電圧と最小電圧を半固定抵抗でセットする方式です。LED点灯回路は送受信の状態を表示するものであり、受信時は青、送信時は赤に点灯します。手もとにあったアノード共通の2色LEDを使用しました。アノード共通であるため、カソードに繋いだトランジスターをスイッチさせて点灯するLEDを切り替える方式です。

図3:回路図(送受信、VFO)


図4:回路図(AMラジオ、電源等)

5.製作
(1)基板の作成
 カッターでパタンをけがき、ニッパーで銅箔をつまんで剥がすことでパタンを作ります。完成した基板を写真1に示します。基板の真ん中のパタンのない部分は回路を追加する際に新たにパタンを描ける予備のスペースです。実際この部分にメータ回路を作りました。

【写真1】基板パタン作成

(2)基板への部品取付・機能単体テスト
 まず受信機の部品を取り付けた後、VFOをつなぎ最高感度となるようにIFTの調整・受信動作の確認をしました。次に、送信機の部品を取り付けた後、VFOをつなぎ最大出力となるようにIFTの調整・送信動作の確認をしました。このように機能ブロック毎に動作確認することにより、各機能を完成させました。さらに送受信機で共通に使用する電源回路やメータ回路などを基板の予備スペースにパタンを描き、すでに完成している機能ブロックとつなぎ合わせることで基板全体を完成させました(写真2)。

【写真2】メイン基板とVFO基板

(3)ケース組み込み・総合テスト
 パネルに取り付けたボリュームやスイッチなどと基板との接続にはメンテナンス性を高めるためヘッダーピンを使用しました(写真3)。ただ少し引っ張れると知らない間に抜けてしまうことがあるので、信頼性の点では望ましくないです。最後に総合テストとして、送信出力のテスト(写真4)、もう一台50MHzAMトランシーバを用意し、ダミーロードを介して交信テストを行い、ほぼ問題なく交信できることを確認しました(写真5)。

【写真3】ケース組み込み状況

【写真4】送信テスト

【写真5】ダミーロードでの交信テスト
6.交信と修正
 完成後、JH1OHZ局とJH1DII局に協力してもらい、テストを行いました。その結果、変調音には特に問題ないが、送受信で周波数ずれが生じる(受信周波数が送信周波数より少し高くなる)問題が見つかりました。これを解決するためVXO回路に補正回路(図3の送受信時周波数ずれ補正用と表記した回路)を追加しました。回路の動作は、受信時にダイオードが導通し、Cをバリコンに並列に加え、VXOの発振周波数を少し下げることにより、受信周波数を少し下げるようにします。修正後に再度交信し、改善されていることを確認しました。
消費電流は電源13.5V供給時、AMラジオ使用時10mA、受信時50mA、送信時190mA(無変調0.5W出力)、450mA(変調ピーク)でした。今後さらに交信を行い、改良すべき箇所を見つけていきたいと思います。
  【2022.11.03 7N4LXB 池田 記】

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