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◇ 投稿記事 ◇ JH1OHZ ⑳   
冗長性を持たせたデータの保存への取り組み(四方山話し)    
 はじめに
皆さんはパソコンのデータをどのように保存していますか?保存状態は万全ですが?バックアップはとっていますか?どのように冗長性(重複性や余剰性)を持たせていますか?「HAMLOGデータが消えてしまった」とか「CTESTWINなどコンテストデータが消えてしまった」といった経験された方もいるのではないでしょうか?ハムに関連したデータでなくても、パソコンの調子が悪くなり、または壊れ、Eメールアドレスのリストやワードやエクセルの多くのデータを失った方は多かれ少なかれ、おられるのではないでしょうか。

私もいままで痛いトラブルを何回も経験しました。最近信頼性があるはずだったUSBメモリでトラブルにあったこともあり、今般RAIDシステムによる自動2重化のシステムを構築しました。
ここで、今回のRAIDを紹介する前に、いろいろな保存ディバイスについて改めて整理してみました。これから案内する保存ディバイスで安心できますか?


 いろいろなデータ保存のディバイス
1)FDD:フロッピーディスク
既に8インチや5インチのフロッピーディスクは再生ドライブすらありません。3.5インチのFDDは古いPCにはかろうじてまだあるでしょうか?フロッピーディスクは既に過去の遺産ですね。

2)HDD:ハードディスク
一般的なパソコンではHDD(ハードディスク)にOSや各種プログラム、データが保存されています。HDDは回転する部品で構成されているため、読み書きに掛かる時間が長いことと、衝撃に弱いことです。動作中に衝撃を与えたりすると、壊れてしまう可能性があります。また時間経過で確実に劣化し故障します。壊れる前にOSのバージョン更新時期に新たなPCに移行すればデータを継続することもできますが、タイミングを見落とし、PC故障につながるとデータ移行も出来なくなる、怖さを持っています。

3)SSD:ソリッドステートドライブ
最近ノートパソコンを始めデスクトップPCでもHDDでなく半導体素子メモリ(フラッシュメモリ)を使ったドライブSSD(Solid State Drive)が多く出てきました。HDDと同様の記憶装置です。メリットは読み出し速度がHDDと比較して非常に早く、動作音がないこと。衝撃に強いことがメリットと言えます。ただし、デメリットは、同じ容量のHDDと比較して価格が高いことです。ただこのSSDの稼働年月(寿命)については証明されている訳ではありません。実はSSDには素子設計上、書き込み回数に上限があるといわれており、上限に達すると論理障害を起こします。HDDを使ったサーバーなどのシステムでは経験則による寿命(交換時期)を見越していますが、SSDにはまだその経験則がないといっても過言ではありません。さらにノートパソコンに最初から装備されているSSDは形状の規格化もなく、容易に脱着できるものではなく、パソコンのメインボードにフレキシブルケーブルで配線されているので、メインボードが壊れるとそのまま書き込み、読み取りも出来なくなります。この場合はメインボードの修理からでしょう。ではSSDが故障した場合はどうなるのでしょうか?論理障害の具合によりますが、データ回復はHDDより難しいといわれています。

4)HDD形状のSSD
3.5インチや2.5インチのHDDの形状またはアダプタを使って外観はHDDでも中味はSSDのディバイスは既に7,8年以上前から出回っていました。HDDに比べ格段に速く動作するので、HDDからこの形状のSSDにシステムとデータを移行し使われている方も多いと思います。SSDとしてのデータ保存性は、前述の3)のとおりです。

5)USBメモリ
USBメモリで容量の大きなものは256GB程度のものまで簡単にネット販売で入手できる時代になりました。一般的にはちょっとしたデータ保存では16GBや32GB程度でしょうか? 3年保証、5年保証や中には永久保証などと打ち出されているメモリもあります。この場合の保証とは何でしょうか?「メモリが壊れたらハードウエアとしての新品のUSBメモリで代品保証します。」という意味で、データを保証しますということではありません。USBメモリはSSDと同様に半導体素子メモリ(フラッシュメモリ)ですから、HDDと異なり物理的な可動部分はありませんから、安心でしょうか?USBメモリもSSD同様、フラッシュメモリは素子設計上、書き込みの上限があり時間軸の稼働年月(寿命)については証明されているものではありません。何回かの書き込みが繰り返されると、論理障害になる可能性を持っています。3年保証、5年保証や中には永久保証などと打ち出されていますが、それぞれのメーカーから、通常の書き込みではその程度の時間を考えておけばいいと思ってのことでしょうか?

6)CD-RやDVD-R
HDDや半導体デイバイスでは不確かだとして、CD-RやDVD-Rに半年毎など時間間隔や、容量の大きさを見ながら、書き込みをされている方もおられるのではないでしょうか?果たしてCD-RやDVD-Rの保存性はどうなのでしょうか?理想的な保存管理をすれば寿命は10年~100年ともいわれていますが、理想的な保存管理とは低湿、暗室保存(できれば宇宙放射線を受けない箱の中)です。一度書き(write at once)のCD-RやDVD-Rの他に、書き換えが可能なCD-RWやDVD-RWでもディスク内の色素をドライブのレーザーで色素を化学変化させ、それがデータとなります。色素ですから、仮に強い光が当たる窓際においておくと色素の状態が変化してしまい、「読めない」といったことが起こります。
この色素の規格は有りませんから、外国製の安いCD-RやDVD-Rは避け、国産の少々高い価格の製品を選ぶことをお勧めします。代表格は国内老舗の「太陽誘電」製品です。

色素で歴史があるのは何と言っても日本書紀の時代から文字で歴史を伝えてきた墨文字といえます。
では音楽CDや映像DVDなどプレス品は大丈夫かというと、実はこれも時間の証明ができていません。音楽CDや映像DVDは元のデータからマザー:母(元データ)をつくりそこからデスク内のアルミニウム層にプレスすると同時に樹脂化しますが、プレス品の場合、保存状態やデータ面の樹脂層に傷がつき、 空気が侵入してアルミニウム層が酸化したり、また高温多湿の環境に放置すると、プレス面が劣化します。ですから、プレス品も永久保存ではありません。

 思い出せる範囲の私の痛いトラブル談
1)14年前:WinXPのノートPC
ノートPCでよく持ち歩いて使っていたこともあり、HDDに振動が多く加わっていたかも知れません。HDDから微かですが「カラカラ」音が聞こえ出しました。システムの立ち上がりが順調でなくなったり、safemodeでないと立ち上がらなくなったり、あきらかにHDD故障の前触れ信号です。必要なデータをバックアップし、PCを交換しました。

2)6年前:WinXPのノートPC
このPCはWinXPで動作する測定器用のPCとしての活用もあったので、XPのサポートが切れる2014年4月の1年前(2013年4月)にHDDからSSDにクローン移行し、SSDでサクサク動作するようにしました。SSD購入時は3年保証がある信頼がおけるメーカー製でしたので、安心していましたが、ちょうど1年経過した時にOSシステムの立ち上がりが極端に遅くなったりエラーで立ち上がらなくなったり、safemodeでどうにか立ち上げごまかし稼働していましたが、OSだけでなく、よく使うアプリの立ち上がりにもエラーが出始めました。SSDも壊れることを実感しました。完全に壊れる前にどうにか最低のバックアップデータを確保。3年保証があったので、購入店にSSDを持ち込みました。1週間ほどで同じ規格のSSDが購入店ルートで届き、以前使っていたHDDからクローンをつくり、バックアップデータを書き込みました。このPCはXPのサポート終了以降はネットには接続させず、測定器として今でも使っています。

3)過去のUSBメモリ
USBメモリが不良になるのは数多く経験しました。USBメモリが出始めたころ、最初は128MBなど小容量のものから使い始め、1GBや2GBというとだんだん大きな容量になって、よく使っていましたが、格安のメーカー名もよく分からないものは“認識しない”、“読めない”など多くのトラブルにあいましたが、データを持ち運んだり、仮保存にはよく使っていました。

4)RAIDを検討するに至った最近のUSBメモリのトラブル
現在のメインのPCはWin10のノートPCで、最初から256GBのSSDです。動作スピードにも不満はなく、メールやJARD関連、電波適正利用推進員協議会、非常通信協議会など重要な処理に使っています。SSDは過去の経験から、「必ず壊れる。」を教訓に主要データ(約10GB)は信頼おけるメーカーのUSBメモリ(永久保証)をAとBの2個を使いダブルバックアップしていました。常にAにバックアップし、日頃気が付けばAからBにバックアップをとっていました。
ところが2020年8月に平時バックアップのAのUSBメモリがドライブとして認識できなくなりました。ところが、ハム専用で使っている他のPCでは読み取りできました。半導体メモリの微妙なロジックレベルのようです。A=Bでなかったため、ハム用PCでAのデータ全てを読み取り、Bにコピーしました。永久保証がついている信頼おけるメーカーのUSBメモリでも、ある確率で壊れることを身を持って知ることができました。今回のトラブルで半導体メモリは予期せぬタイミングで壊れるものだ!を痛い程知りました。

 RAIDの検討、そして構築
RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)とは、複数のハードディスクを組み合わせることにより1台(1ドライブ)の仮想的なハードディスクとして認識させて冗長性を向上させる技術のことで、レイドと呼ばれます。HDD障害が発生した場合でもデータの復旧及びアクセスを可能にしたり、複数HDDへの分散書き込みによるデータ保存を高速化させたりできます。RAIDは「バックアップ」とは異なる概念の技術です。

RAIDにはRAID 0~6までの大きく7種類があります。RAIDは「RAID+番号」という形式で表現されますが、ここではデータ自動復旧に焦点をあてた 「RAID1」と「RAID5」を紹介します。

「RAID1」は2つのHDDを使い、常に2つのHDDに同じデータを書き込むミラーリングシステムです。1つのHDDが壊れたら、ドライブを交換すると自動的にバックアップしミラーリングを実現します。2つのHDDを使いますが、利用効率は1つのドライブとして認識しますから、利用効率は最大50%です。

「RAID5」はHDD4つで構成し、データからパリティー(誤り訂正符号)を生成し、データとともに4つのドライブに分散して記録します。4つのドライブのうち、どれか1つが破損しても、ドライブ交換することでパリティー内の情報から復旧が可能なモードです。HDD3台分の容量が使用できますので利用効率最大75%となります。

今回自宅用にRAID1のHDD2つを使うミラーリングRAIDを構築することにしました。
RAIDに使われるHDDは通常のパソコン用HDDでなく、信頼性が高いNAS(Network Attached Storage)用のファイルサーバーとして使われるHDDです。ネットワーク対応HDDとも言われ、WANやLANのネットワークや直接接続する使い方もあります。今回はPCからUSB3で直接接続しました。今迄のUSBメモリの重要データが約10GBでしたから2TBなど全く不要ですが、NAS対応の高信頼性のHDDは2TBからという訳で、しかたなく2TB×2台を購入しました。10年前だったら、同程度のRAID1での数十万円、RAID5だと100万円以上したものが、今回はRAID1用のHDDコントローラ+NAS用HDD(2TB×2)でなんと30k円で少しおつりがきました。10年間と比べると1/10以下で、時代の変化に驚く次第です。

今迄の主要データ以外に、過去10年間のデジタルカメラデータと、i-tuneや音楽鑑賞用におとした音楽データも一緒に入れ、これでようやく40GB弱です。それでも2TBではガラガラです。
PCをシャットダウンすると、自動的にスリープ状態になります。PC動作中でも設定時間アクセスしないとスリープ状態になります。今回は15分のスリープ設定としました。HDD内の温度管理もしていて温度があがると自動でファンが回り始めます。初めての自宅RAIDシステムですが、これで安心システムになったように思います。

現役時代に仕事で大容量写真画像保存のためRAID5に触れていた時とくらべると、RAID1ですが、いとも簡単に低価格で構築できるようになっていて、改めて時代の変化を感じた次第です。

参考までにRAID設置状況の写真です。机の下に設置し、机の横のパンチングメタルにアルミ板を加工し台を作り、下側ゴム足と横側にクッションを入れて、地震でも落ちないように紐で括り付けました。PCでのソフトウエアでのRAID管理画面を添付します。
PCでのソフトウエアでのRAID管理画面

RAID管理画面

  【2020.10.01 JH1OHZ 片倉 記】
pdfファイル(印刷用):275KB

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