神奈川県支部登録クラブ  登録番号:11-1-2 
 WELCOME TO JA1YBQ MEMBER
---------------------- ------1953年12月創立----
  会員用のページへようこそ
◇ 投稿記事 ◇ 7N4LXB ㉔   
カツミエレキーEK-150の修理と改造
1.EK-150について 
 今回は古いエレキーの修理と改造について紹介します。あるローカル局から動かないので見てほしいとカツミエレキーEK150を預かりました。パドルとエレキーが合体した構造で、分厚い鉄板の上下のカバーがずっしりと重く、相当年季が入っている品のようでした【右写真】。

当局の下手な電信操作で少し打ってみると、その重量のため安定した操作ができ、これなら少し練習してうまくなりたいと思わせるような操作感でした。電信はろくにできませんが、ならば修理だけでもと思って、まずネットから回路図(参考資料1)を入手し、構成を把握するところからはじめました。

 
               
2.EK-150の全体構成 
 まず、回路図と実物を対比しながら、構成を把握しました。大きく以下の構成要素から成っています。

(1)電源回路
AC電源をトランスで降圧、平滑し、DC15Vを得たのち、ツエナーダイオードとTrによる安定化回路で5Vを得る系統と、DC9V程度の外部DC電源を安定化回路で5Vを得る系統の2種類。ラグ板とメイン基板で実装されていました。

(2)符号発生回路
符号のおそらく短点の長さの基準となるクロックを発生するTr1石の発振回路と、これから長点、符号間隔、パドル操作に応じた符号を発生するTTL-ICを使用したロジック回路。メイン基板に実装されていました。

(3)サイドトーン発生回路
ロジック回路で生成した符号に対応するON/OFF信号により制御されるTr1石のトーン発振回路、およびスピーカーを駆動する2石アンプ。サブ基板に実装されていました。

(4)キーイング回路
ロジック回路で生成した符号に対応するON/OFF信号によりTrあるいはリレーをスイッチさせる回路。メイン基板に実装されていました。

3.故障個所の探査
 構成要素毎に回路を切り離し良否を調べました。(1)、(2)、(4)はメイン基板に一体化されて載っているため、基板上のジャンパーやプリントパタンを切り離すことで回路を分離しました。

(1)電源回路
AC電源系統では安定化回路のTrのエミッタ-コレクタ間が導通しており、15Vがそのまま出力されていました。DC電源系統は大丈夫でした。

(2)符号発生回路
まずテスターで電源とGND間を測定すると0Ωとなり、どこかで短絡しているようでした。ロジックICの電源パタンをカッターで切り離しながら、7つあるロジックICの電源端子とGND間を調べると2つのIC(74LS00:2入力NAND)で短絡故障、残り5つのIC(74LS74:Dフリップフロップ等)も論理通りの動作をしてなく、全滅状態でした。電源回路の故障で15Vが印加されたためと思います。

(3)サイドトーン回路
トーン発振しないのでトーン発振回路のTr故障とすぐに分かりました。2石アンプは大丈夫でした。

(4)キーイング回路
キーイングのON/OFF信号を加えてもTrやリレーが動作しないのでTrを外して調べたところ、Tr故障が分かりました。

4.修理と改造
 故障したTrは代替品に取り替えました。いずれも低速動作すればよいTrなので、細かいことは気にせずほぼ同等のものをジャンク箱から探し出して付け替えました(回路図の赤い〇の個所)。

 符号発生回路のロジックICは全滅なので、部品箱にあった8ピンのPICマイコン12F675で置き換えることにし、これを使ったエレキーの作例をネットで探しました(PICエレキーで検索すると多数見つかります)。今回は参考資料2の作例を使わせてもらいました。

 回路はEK-150に整合するように多少変更しました。EK-150ではスピード調整用のVRに20KΩのものが付いているので(参照した回路では5KΩ)、同一の分圧比となるように、上下の抵抗も4倍の値にしました(ADコンバータで電圧を読み取ってスピードを決めているため)。また、参照回路にある2つのメモリー用タクトSWのうち、SW2のみをEK-150のモード切替トグルスイッチに対応させるようにしました。タクトスイッチのようにトグルスイッチを操作しなければならないことが少々難点です。またPICの動作電圧は5.5VまでOKなので、EK-150の安定化電源の5Vをそのまま利用することにしました。

 改造工作は、メイン基板から、故障したロジックICや不要な部品をすべて取り外し、ICパターン跡の1つを使ってマイコンを搭載するICソケットを付けました。幸いマイコンから符号用出力も2系統出ており、論理も反転させる必要もなく、それぞれサイドトーン回路、キーイング回路に接続できました。改造の終わったメイン基板の表面、裏面の様子を写真2、写真3に示します。


写真2】

【写真3】

【回路図
 マイコンに書き込むファームウェアは参考資料2に掲載のものをそのまま使わせてもらいました。HEXファイルをダウンロードし、PIC書込みツールであるPICkit2を使って書き込みました(写真4)。エレキーの動作はタクトSW1に関するものを除き、参考資料2にある「F675キーヤー操作説明書(14KB)」の通りとなります。
      
【写真4】(右は拡大図
5.おわりに
 符号発生回路をマイコンに置き変えたことにより消費電流も20~30mAと少なくなり、電池駆動だけでもよい電流値になりました。少し動かしてみて、電源OFF後の電源電圧の立下りが遅いためか、即電源ONにするとマイコンにリセットがうまくかからず誤動作する場合があることがわかりました。この場合にはちょっと間をおいて再度電源ONしてもらうように依頼主のローカル局には伝え、しばらく使ってみてもらうことにしました。

 アマチュア無線歴の長い方は、故障した古いエレキーがシャックの片隅に眠っているのではないかと思いますが、マイコンに置き換えて現役復帰させてみるのも面白いのではないかと思い投稿しました。

(参考資料1)EK-150回路図 https://www.dl0bn.de/dc7xj/Anleitungen/Katsumi%20EK-150%20Manual.pdf
(参考資料2)PICエレキー回路図とファームウェア 
http://www.hi-ho.ne.jp/hida/keyer08.htm
  【2020.11.12 7N4LXB 池田 記】

TOPページへ戻る   会員頁TOPへ戻る   投稿記事に戻る