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◇ 投稿記事 ◇ JA1TEJ    
超音波のはなし   
超音波というと、どういうものを思いつくでしょうか?  
超音波洗浄機、ソナーなどが身近ですが、それぞれパルスでの応用と、連続波での応用があります。
電磁波の応用では、レーダがパルス波ですが、無線はほとんど連続波です。超音波の応用では、洗浄機は連続波ですが、ソナーや探傷器などはパルスです。
歴史的には、ソナーや探傷器などでは、戦後、レーダの技術を見て発展してきました。

1.帯域幅
中学生のころ、JA1JAOさんのところで、水晶フィルタを利かせた地1号受信機の音を聞いたことがあります。当時は7MHz帯はQRMがひどく、受信機の帯域幅が狭いほどQRMに強く、聞きやすいだろうと思っていました。ところが地1号からのCWの音は、長点と短点がつながったような音で、聞き取りにくかったことを覚えています。なぜだろうと頭を抱えていました。

大学に入ってフーリエ変換などを勉強しても、そのことに気が付きませんでした。会社に入って、超音波機器の開発に携わりましたが、実験していると、図1のような波形のセンサからの信号が、図2のような波形になってしまうことを経験して、信号がもつ周波数成分を含む帯域幅で増幅する必要があることを知りました。
超音波探傷器や超音波診断装置では、距離の近い反射源を分離識別するために、時間的な分解能が求められます。
フーリエ変換というと難しく感じますが、横軸が時間の波形は、sinω1.Sinω2・・・ と多くの周波数成分の多項式で表すことができるというものです。一つの周波数成分となると、sinωtだけになり、これは連続波にほかなりません。
JA1JAOさんのところで聞いたCW音も、非常に狭帯域の水晶フィルタを通したので、ほぼ単一周波数成分となり連続波として聞こえたことになります。
超音波探傷器や超音波診断装置の受信増幅器は、できるだけ元の信号波形を維持するために、中心周波数の10倍程度の帯域幅の増幅器を使用しています。

また、戦争中の日本のレーダでは、来襲する飛行機の機影は、ひと塊としてしか表示できませんでしたが、米国のレーダでは機影が分解できたので、何機接近してきているかわかったそうです。日本では高周波を広帯域で増幅する技術がなく、スーパーヘテロダインで、狭帯域だったようです。帯域幅と分解能の関係の技術の差が戦争に負けた要因と思われます。

2.波長
超音波は、基本的に機械的振動ですが、伝搬速度が電磁波に比べると、非常に遅いです。伝搬速度が遅いと、λ=c/fの式でわかるように波長が短くなります。波長が短くなると、超音波を収束する能力も高くなります。
超音波探傷や超音波診断装置に使用される超音波の周波数は2MHz~7MHz程度になりますが、この周波数での波長は、数ミリになります。波長1ミリの電磁波の周波数は、300GHzとなり、非常に高い周波数ですので、指向性は大変鋭くなります。
指向性は、電磁波ではパラボラアンテナのようなもので絞りますが、超音波でも同じようなパラボラ構造のセンサで絞ることもありますが、超音波診断装置などではフェーズドアレイなどのセンサで絞ることがおこなわれています。センサを小さなセンサに分割します。個々の小さなセンサは、点音源となって指向性は広くなります。それぞれのセンサを駆動する信号のタイミングをずらしたり、受信するときは受信した信号の位相をずらして加算増幅するなどして、信号処理を行います。すると、検査体の中で、様々な位置に焦点を結ばせて検査体の内部の細かな断面画像を得ることができます。

図3 フェーズドアレイ

3.インピーダンスによる反射
電磁波の伝送で、伝送路には特性インピーダンスというのがあります。一方、超音波の伝送路にも音響インピーダンスというのがあります。これらは、伝送路に固有の値であり、その境界面では通過と反射が発生します。
この時の反射率の式は、R=Z2-Z1/Z1+Z2 となり、超音波も電磁波も同じです。(どちらも波動ですから、当たり前ですが)


4.インピーダンス整合
インピーダンスの不連続があると、効率的な信号伝搬が阻害されるので、インピーダンス整合が行われます。電磁波の場合は、パイマッチ回路やトランス、LC回路など様々な方法で整合ができます。超音波の場合は1/4波長の厚さの整合層が用いられます。
無線でも、1/4波長の伝送路によるインピーダンス整合回路はあります。
図7のようなもので、昔のダブレットアンテナなどに使用されたことがあるようです。
図7で、ZFを600Ωの梯子フィーダとすると、ダブレットの給電点インピーダンスは75Ωになるので、ZMとして212Ωのフィーダで整合できます。ただし、最近の無線機の出力インピーダンスは50Ωのものが多いので、600Ωのフィーダ線との間に、整合回路が必要になります。


図7. 平行2線の整合回路

  【2021.05.19 JA1TEJ 佐藤 記】
pdfファイル(印刷用)

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